実機とシミュレータ比較
本番は、MU-300という小型ジェット機を使用します。ASTRAXでは、実機の内装を模擬したシミュレータを独自に用意しています。実機を使用せずシミュレーションやリハーサルを行うことができます。
それぞれの詳細について、以下に示します。
実機(MU-300)
カテゴリ | 内容 |
---|---|
撮影カメラ設備 | GoPro カメラ(HERO10) 2台 |
撮影カメラ設備 | キャノン製広角 デジタルビデオカメラ(iVIS mini X) 1台 |
撮影カメラ設備 | ニコン製 一眼レフカメラ(Nikon D780) 1台 |
撮影カメラ設備 | ジンバルカメラ(Osmo Pocket) 1台 |
撮影カメラ設備 | iPhone11 Pro or 12Pro 1台 |
照明設備 | Tolifo 製 60W RGB LED ビデオラ イト GK-S60RGB 2台 |
その他 | 無重力飛行搭乗服 各サイズ合計12着 |
◆MU-300の概要
ASTRAXが無重力飛行サービスに使用している無重力飛行機のベースとなっている三菱式MU-300(Diamond I)は、三菱重工業株式会社が1981年に開発した小型ビジネスジェット機です。現在でもシリーズ合計として900機以上が世界各国で活躍しています。また、日本の自衛隊もT-400練習機として導入しています。機体価格は発売当時の価格で約7億円です。このMU-300をダイヤモンドエアサービス社が無重力飛行用に改修し、運航を行っており、ASTRAXがそれをチャーターして利用しています。
◆無重力飛行機MU−300の基本諸元
最大離陸重量 :6.6 ton (14,630 Lbs.)
サイズ :13.3mW×14.8mL×4.2mH
エンジン :P&W JT15D-4
エンジン推力 :1,134 Kg (2,500Lbs .)/基
最大航続距離 :2.334 Km (1.260 NM)
最大運用速度 :796 Km/H(430 KT)
最大運用高度 :12,505 m (41,000 Feet)
最大座席数 :7席(パイロット席2、客席5)
◆MU-300の外観(写真・解説)
現在日本において唯一無重力飛行サービスに利用されている飛行機MU -300の外形を以下に示します。
◆MU-300の内装
無重力飛行サービス用に改造されたMU-300の各部のサイズを以下に示します。
◆入口ドア
MU-300の入口は、進行方向に向かって左側にある。ドアの画像を以下に示します。なお、MU -300には、進行方向に向かって右側に非常用の出口がありますが、通常は使用しないため、ここでは割愛します。
◆コックピット
MU-300のコックピットと顧客が搭乗する横向きのシートとの間には、基本的にネットなどはありません(白い幕がありますが、通常は使用しません)。MU-300のコックピットの画像を以下に示します。
◆前方の窓
MU-300の横向きのベンチシートの正面(進行方向左側)と背面(進行方向右側)にはそれぞれ窓があります(正面側は、通常の窓と入り口のドアの窓の2種類)。
◆前方の座席(ベンチシート)
パイロット席のすぐ後ろ(フリースペースの前側)には、横向きに3人用のベンチシートがあります。座席の下には収納スペースがあり、簡易実験に使う機材などを収納することができます。
◆フリーエリアの空間と後部座席
MU-300の機内の中央(やや前側)には、ネットが貼ってあり、その後ろ側はフリーエリア(座席が取り外してあり、広い空間を飛び回れるようになっています)と呼ばれる空間があります。座席は2脚あり、離陸と着陸時は2名がフリーエリアの座席に座りますが、上空の安定飛行中や無重力飛行中は最大4名まで中に入ることができます。
◆フリーエリアの窓
フリーエリアの窓は左右3個ずつ、合計6個あり、5つはキャビンの壁に、1つは非常口扉に設置されています。内側の表面はアクリル板になっており、GoProカメラなどの吸盤アタッチメントが装着できるので、ASTRAXでは、フリーエリアの横からの撮影や手元撮影などが必要な場合は、GoProカメラなどを吸盤でこれらの窓に設置することもあります。
◆フリーエリアの天井
フリーエリアの天井は、酸素マスクが出てくる扉やエアコンの吹き出し口、非常口の案内灯などがありますが、無重力飛行においては基本的に使うことはありません。突起物などもないので、何かを固定することもほぼできないと考えた方がいいです。
◆フリーエリアの床
フリーエリアの床には、4つに分割できるクッションマットが設置されています。表面は合皮なので、液体などがこぼれても拭けば取り除くことができます。
クッションマットは取り外すことができ、クッションマットを外すと飛行機の床面があります。床面には座席や実験機材などが固定できるアタッチメントレールがあります。
床面の脇には、エアコンなどのための吸気口があるため、そこを塞がないように注意が必要であります。
水以外の液体を浮遊させたり、大量の水を扱う実験などを行ったりする場合は、クッションマットの上に吸水マットや養生シートなどを設置するようにしています。
◆フリーエリアの前方と後方のネット
フリーエリアの前方と後方には、フリーエリアで浮遊する人や物を保護するために、ネットで区切れるようになっています。通常飛行の際は取り外しできますが、基本的に無重力飛行中はネットを取り付けることになっています。ネットはラッシングベルトを組み合わせたものになっており、フックに引っ掛けて締め付けることができるようになっています。
液体による浮遊実験などを行う場合は、このネットに加えて、さらに養生シートなどをこの上に貼り付けるようにします。また、座席の背後に黒い暗幕をかけることでネットや機器が見えないようにすることもあります。ただし、後部のネットの上部にある重力表示器が隠れないようにする必要があるため、養生する場合は、その部分は透明のシートを貼るようにしています。
◆MU-300の撮影・照明設備
ASTRAX無重力飛行サービスでは、映像や写真による撮影サービスを用意しています。そのための機材を紹介します。
◆撮影用ビデオカメラ設備
現在、ASTRAXの無重力飛行サービスにおいては、映像撮影用にGoProカメラ(HERO10)が2台、キャノン製広角デジタルビデオカメラ(iVIS mini X)が1台、さらに、ニコンの一眼レフカメラ(Nikon D780)を使用できるようにしています(ただしNikon D780は通常は写真撮影に使用します)。必要に応じてジンバルカメラ(Osmo Pocket)も使用しています。
映像カメラは基本的にクランプやアタッチメントでしっかりと固定されていますが、設置位置は自由に変えられるようになっています。
さらに必要に応じて、iPhoneによる映像撮影も行っています。これは固定ではなく、無重力飛行士(ZeroG-naut)が手に持って撮影するので、動きのある動画を撮影することができます。
今後、ASTRAXではさらにGoProカメラを2−3台追加する予定で、その1台は360度カメラになる予定です。
◆写真撮影用カメラ設備
ASTRAXでは、無重力飛行士(ZeroG-naut)がNikon の一眼レフカメラD780を使用して、写真撮影のサービスも行っています。また、撮影においてはフラッシュも使用するため、高画質で鮮明な写真を撮影することができます。また、同時に適宜iPhoneによる写真撮影も行っています。
◆照明設備
ASTRAXでは、撮影用のカメラに加え、照明設備も用意しています。照明機材はTolifo製 60W RGB LEDビデオライトGK-S60RGB を使用しています。このLED照明が2台あり、これらもカメラと同様にクランプでしっかりと固定されています。設置位置は自由に変更可能です(ただしクランプが留められる場所に限ります)。
色合いや明るさ、カラーも変更できるため、自由な照明調整ができます。
照明の明るさがかなり強力なため、十分な明るさが確保できますが、今後、もう少し明るさが弱くて、コンパクトで軽量なLEDライトにも変更可能にする予定です(今後検証を行い、実用性を確認する必要があります)。
◆ASTRAXが使用する搭乗服
ASTRAXでは、無重力飛行を行う搭乗者に、オレンジ色の搭乗服を提供しています。これまでは支給(持ち帰れるように)していましたが、今後はレンタルになります。
搭乗服には、フライトごとに固有にデザインされたミッションワッペン、ASTRAXのロゴワッペン、ASTRAX無重力飛行の証である「ZERO」のロゴワッペン、などをつけています。
シミュレータ
カテゴリ | 内容 |
---|---|
撮影カメラ設備 | GoPro HERO 10 2台 |
撮影カメラ設備 | CANON 製のデジタルビデオカメラ iVIS mini X 1台 |
撮影カメラ設備 | Nikon製一眼レフカメラ D780 1台 |
撮影カメラ設備 | iPhone11Pro,12Pro 各1台 |
照明設備 | Tolifo 製 60W RGB LED ビデオラ イト GK-S60RGB 2台 |
その他 | 簡易実験用テーブル 1台 |
その他 | 無重力飛行搭乗服 各サイズ合計12着 |
その他 | 電源用コンセント ●個 |
その他 | エアコン 1台 |
◆シミュレーターの外観
ASTRAX無重力飛行機教育訓練シミュレーターは、アメリカの古いキャンピングトレーラー(エアストリーム社製アルゴジー)の内部を改造したものを使用しています。
シミュレーターは飛行機の機内だけを模擬しているため、外観はキャンピングトレーラーのままです。
また、実際の飛行機(MU−300)は進行方向に向かって左側に出入り口のドアがありますが、アルゴジーは進行方向に向かって右側に出入り口のドアがあるため、その部分は実際のものと異なっています。ドアを入った正面には、実際の機体にはないエアコンが設置されているため、シミュレーターを利用する場合は、ドアとエアコン部分はないものとして考えて使用するようにしています。
◆入口ドア
入口のドアは、進行方向に向かって右側にあるため、実際の無重力飛行機とは異なっています(実機は左側にあります)。
シミュレーションの際は、このドアは無いものとして扱います。
◆コックピット
コックピットは顧客のミッションには必要ないため、実機を模擬していません(エアストリームアルゴジーの運転席のままです)。
◆前方の窓
窓は、基本的にミッションに関係ないため、印刷した画像を貼っています。
実機の場合、進行方向左側の窓の一つが入口のドアに設置されていますが、このシミュレーターでは左側にドアがなく、代わりにその部分にエアコンがあるため、窓を脱着できるようにしています。
◆前方の座席(ベンチシート)
実機と同様に、パイロットシートの後ろ側に横向きに3人用のベンチシートがあります。各座席の下は収納になっており、実験機器などが入れられるようになっています。
◆フリーエリアの空間と後部座席
機体後方のフリーエリアは、実機と同じサイズで作ってあり、両側の壁と床面にはクッションマットが設置されています。
後部には2脚の座席が設置されています。見た目が実機とは異なりますが、ミッションには影響しないため問題ないと考えています。
◆フリーエリアの窓
フリーエリアの窓も、画像を貼ったものとなっています。実機と同様に左右3個ずつ合計6個の窓があります。今後、アクリル板を貼ることで、吸盤アタッチメントを使ってGoProカメラを設置できるようにする予定です。
◆フリーエリアの床
フリーエリアの床には、実機と同様に、4枚に別れたクッションマットが敷いてあります。これらのマットは剥がすことができますが、マットの下の床にはまだ機器を装着するためのレールは設置されておらず、絨毯のみが敷いてあります。
◆フリーエリアの前方と後方のネット
実機と同様に、フリーエリアの前後にネットが設置されています。今後、この上にさらに、養生用シートを取り付けられるようにする予定です。
◆撮影用ビデオカメラ設備
映像撮影用カメラとして、実機と同様に、フリーエリアの前方側にGoPro HERO 10が2台設置してあります。設置場所は移動できますが、通常は、フリーエリアの前側のネットを固定しているポールに装着して、フリーエリア全体を撮影するようにしています。必要に応じて、前方のベンチシート側を撮影したり、窓に固定して、無重力実験の手元のアップを撮影することもできます。
また、フリーエリアの後方側のネットの上部には、CANON製のデジタルビデオカメラiVIS mini Xを設置してあり、フリーエリア全体を後方から撮影できるようになっています。
これらはあくまでシミュレーションのためのものなので、設置位置や画角のチェックなどを行うためのものですが、プロモーション映像を撮影する場合などは、実際に録画を行うこともあります。
◆写真撮影用カメラ設備
実機での写真撮影に使っているNikon の一眼レフカメラD780により撮影が可能です。撮影においてはフラッシュも使用するため、高画質で鮮明な写真を撮影することができます。また、同時に適宜iPhoneによる写真撮影も行っています。
◆照明設備
照明設備も実機と同様で、フリーエリアの前側のネットを固定しているポールに固定して、左右からフリーエリアを照らすことができるようになっています。シミュレーターにはコンセントがあるため、通常はコンセントからの電源を使用し、必要に応じてバッテリーに切り替えるようにしています。
◆簡易実験用テーブル
実際の無重力飛行機で行う実験のうち、実験に必要な装置や道具を乗せるためのテーブル(突っ張り棒です。必要に応じてパネルを乗せます)を使うものがありますが、シミュレーター内でもそのテーブルを設置できるようになっています。それによって、テーブルを使った実験について、事前の段取りの評価などが行えるようになっています。
◆無重力飛行搭乗服
シミュレーターにおいて、撮影などを行うために、無重力飛行用搭乗服も用意されています。さまざまなサイズで、12着あります。
◆その他の機能
シミュレーター特有の機能として、電源用コンセントとエアコンが設置してあり、必要に応じてポータブルバッテリーやポータブルエアコンなども使用することができます。
さらに、シミュレーターを設置しているエアストリームアルゴジーは自走式キャンピングトレーラーであるため、必要に応じてシミュレーターごと移動させることもできます。
◆保管場所
日本の千葉県内の某所にあるASTRAX民間宇宙事業創造研究開発教育訓練センター(ASTRAX宇宙センター)内にある、エアストリームアルゴジー内に設置されています。